イスラム教徒のスタッフ

国際的な日本料理ブーム

ご存知の通り和食は国際的にブーム。多くの国で日本料理店が開業しています。
海外求人の中では日本料理店の求人が最も多いのではないでしょうか?
経済が活性化しているマレーシアやインドネシアといったイスラム教の国での日本料理店の求人も非常に多いです。そこでイスラム教の国の飲食店での就職が選択肢に入る人に向けて、私がイスラム教の国マレーシアのラーメン屋で働いた時の出来事をご紹介したいと思います。

豚肉はイスラム教では御法度

何しろラーメンですからスープの出汁をとるにも豚肉、チャーシューも豚肉なわけです。ご存知のように豚肉とお酒はイスラム教では御法度です。現地の人がイスラム教では商売にならないのでは?と思うかもしれませんが、中華系マレーシア人や日本人を含む在住外国人には豚肉を食べられる人がたくさんいるので市場は狭いですが商売にならないわけではありません。

人材確保が難航

しかし人材確保が難航しました。マレー人はイスラム教なので豚肉を扱う飲食店では働けません。さらに豚肉を食べる中華系マレーシア人はブルーカラー(※)の仕事をやりたがらない傾向にあります。クアラルンプールのレストランやバーなどで働く多くのスタッフが実はマレーシア国籍ではない外国人が多いのです。バングラデッシュ、ミャンマー、フィリピン、ネパールなどの人々です。外国人もイスラム教徒が多かったです。

皿洗いができないスタッフ

結局、外国人のスタッフを雇ったわけですが、豚肉を扱う店であるにも関わらず、ほとんどイスラム教徒でした。色々な出来事が起こりましたが、中でも一番の困ったのは皿洗いができない者が出てきたことでした。
イスラム教かどうかは面接時にチェックして「うちは豚肉を扱う店だけど大丈夫か?」と聞き「構わないよ」という了承をとった上で雇い始めます。しかし、宗教に対する熱心さには個人差がありました。例えば、ある者は豚肉を自分が食べさえしなければよく触ることは別に気にしない、ところが、ある者はまるでアレルギーでもあるのかのように皿洗いを忌み嫌ったりするわけです。「なるほど『豚肉が汚れている』とはこういうことなのか」と実感しましたが関心している場合ではありません。
じゃあ「ゴム手袋を使って洗って」と言ったのですが、のらりくらりと皿洗いをやらずに済ませようとします。他のスタッフも「不公平だ」と言い出し確執が起こり険悪になります。だんだん私も、お客さんへ持っていったり片付けたりするのはいいけど皿洗いはダメって、宗教を言い訳にして汚れ仕事をやりたくないだけじゃないかと疑ったりしてまうわけです。しかし冷静に考えてみると、確かに皿洗いとなるとスープがはね散らかるので、自分の体に付着するのは、ほとんど防ぎようがないと思いましたし、何しろここはマレーシアなのです。
まあ、そのあとは、そのスタッフには他の仕事を任せてやりくりしたのですが、非常にやっかいだったと記憶しています。そんな出来事があって以後、面接時に皿を洗えるかどうか確認するようになりました。
いかがですか? このケースはイスラム教というわかりやすい事例でしたが、海外で仕事をすると、文化の違いからくる予想外の問題と向き合わなければならないことがよくあるという話でもあります。
※ブルーカラーとは、主に作業服を来て行う仕事で肉体労働を指す。反対にデスクワークなどの仕事はホワイトカラーという。